海の誘い【いざない】
海、
私の大好きな海、
大きく ゆったりした海。
私は思う、
真っ青な水を、
寛容と慈愛と包容力を
満々と湛えて海は、
じっと私を見守っていると。
来る日も、 来る日も、
悲しみと絶望の日々
そんな私を、海だけは知ってくれる。
だから私は、海が大好き。
私の故郷にも海がある、
静かな海がある。
潮風が髪を乱し、
潮風が耳元でささやく、
美しい海がある。
その海に、
私は思い出を残してきた。
少女の夢を語ったこと、
水辺に素足を投げ出し
たわむれたこと、
そして・・・・・・・・・・
そして、 今、
私はひとり海辺に立ち、
過ぎし日の思い出を思い浮かべる。
水平線の彼方に、
瞳をすえて、
記憶の糸を辿っている・・・・・・・・
荒れ狂う海、
重く、暗雲の垂れこめた海、
岸壁を削り、
人を呑む海、
そんな海を私は憎む。
荒れる海は、
私を傷つけ、悲しませるだけ。
狂った海は、傷ついた私を、
絶望へと追いやるだけ。
そんな海を私は嫌う。
静かな海が好き、
穏やかな夕凪の海が好き。
優しさと慎ましさと静けさのある、
海が大好き。
辛いことは、
反省をうながすように、
楽しいことは、
一緒に喜んでくれるように、
私の語らいに、
答えてくれる海。
その海が呼んでいる、
静かな海が、
私の大好きな海が、
呼んでいる、
呼んでいる。
海、
大きく、ゆったりした海、
その海が、私を呼んでいる。
私が若い頃日本橋の商事会社で働いていた時、
会社の社内報に載せた詩です。
思いがけず古い社内報が出てきたので載せてみました。